ライフツービッツ株式会社(代表取締役:井上総仁、以下、当社)は、福岡大学医学部小児科・永光信一郎主任教授(以下、永光教授)と、福岡舞鶴誠和学園 福岡舞鶴高等学校及び福岡舞鶴誠和中学校(理事長:山手誠之助、以下、誠和学園)の生徒を対象に、「GIGAスクールを活用したCBTアプリによる子どものヘルスプロモーション実証実験」を行います。

 当社は、永光教授と共同開発した「むぎまるアプリ」を用いて、子どもたちの健康支援に関する研究を積極的に進めてきました。2019年に、中高生(のべ217人)を対象に実施した介入研究では、「CBTアプリ(※1)と思春期健診」により、思春期を迎えた中高生の自殺願望(希死念慮)発生率を7%から0.7%(※2)に大幅に抑制できる可能性があることを確認しました。そして、今回の実証実験では、「GIGAスクール版むぎまるアプリ」を誠和学園の生徒に使用していだだき、使用前後の心の状況を調べて、学校全体の生徒のこころと体が健康になることを証明したいと考えております。

■社会的背景
 近年、日本における子どもたちのメンタルヘルスの問題が深刻化しています。特に、子どもの自殺率が過去最高に達しており、効果的な対策の必要性が高まっています。厚生労働省の統計によると、昨年1年間で自ら命を絶った小学生、中学生、高校生の数は514人となり、昭和55年以降で初めて500人を超え、過去最多となっています。子どもの自殺対策について、厚生労働省や文部科学省、それに警察庁などは強化に向けた検討を進めており、こども家庭庁で開かれた会議では、幅広い職種の専門家でつくる若者向けの自殺危機対応チームを全国の都道府県に設置し、リスクが高い若者への対応について市町村に助言するなど支援にあたるとしています。また、学校で児童・生徒に1人1台配られるタブレットなどを使って自殺の兆候を把握したり、支援につなげたりするシステムの全国での実施を目指すことや、警察や自治体などがまとめる統計や資料を分析する調査や研究を行うとしています。子どもたちの健康を守ることは、私たち社会全体が責任を持って取り組むべき社会課題となっています。

■本研究の概要
 本研究は、子どもたちが自身の心身の健康について学び、日常生活の様々な悩みに対処する能力を高めることを目的としています。子どもたちは、起床困難、倦怠感、不眠、生理痛、ゲームやインターネットの依存、人間関係や学校生活における問題など、多くの課題に直面しています。これらの問題は時に深刻な心理的な影響を及ぼし、消えたいという思いに至ることもあります。カウンセリングが解決策となる場合もありますが、自己の心理的メカニズムや行動パターンを理解することで、感情を軽減できることが示されています。
 「むぎまるアプリ」は、セルフモニタリングのスキルを通じて不安や抑うつ感を軽減し、心身の健康を促進すること可能性を証明しました。現在、医療分野ではこのようなアプリの開発が進んでおり、本研究ではGIGAスクール構想の下で配布されたタブレットを使用して「むぎまるアプリ」を導入し、児童生徒のこころと体の状態を使用前後で評価します。これにより、学校全体の生徒のこころと体の健康が向上するかどうかを検証することを目指しています。

■本研究の対象者
 本研究の対象者は、10~18歳(小学校5年生~高校3年生)の方で、通学中の学校長が本研究への参加を認めた学校の児童生徒になります。保護者の同意と中卒又は16歳以上の児童生徒さんでは本人の同意も得られる方を対象といたします。また、研究にご参加いただいた児童生徒には、「ボランティア証明書」を発行いたしますので、社会貢献や福祉活動等への積極的な参加を示す記録として、児童生徒の皆様の社会への関心を深める貴重な機会として、ご活用いただけます。そして、子どもたちの健康を守るための研究を推進するためには、学校教育関係者の皆様のご支援が必要です。実証実験にご協力いただける皆様からのご連絡をお待ちしております。

※1: CBTアプリとは・・・CBTはCognitive Behavioral Therapyの略で、日本語では認知行動療法と呼ばれます。さまざまな精神疾患の治療に活用されている心理療法で、専門家の指導のもと自分自身で思考や行動の癖を把握し、自分の認知・行動パターンを整えていくことでストレスを減らしていくメソッドとなります。

※2:7%から0.7%・・・全217名の中高生参加者のうち、事前アンケートにより既に希死念慮を持っていた6名は参加対象から外して専門家によるケアに誘導。残りの211名を対象に介入群と非介入群に分けた結果、非介入群からは5/72名=7%の確率で希死念慮を確認。一方介入群では1/139=0.7%にとどまる事を確認。思春期健康診断ないしCBTアプリによる介入によって、非介入群に比べ大幅に希死念慮発生を抑えることが可能である事を確認しました。

◆福岡大学医学部小児科について
 福岡大学医学部小児科は、「こころをつなぐ小児医療」を理念に掲げ、子どもたちとその家族が真の主役である医療を実践しています。治療を超えて子どもたちの成長と発達を見守り、支援する役割を果たすことにも力を注いでおり、専門性の向上、研究、教育においても常に進歩を求めています。子ども達にあたりまえの生活を提供してあげること、そして「その子どもの幸せのために。」をクレドに、質の高い医療サービスを提供し続けることを目指しています。

◆ライフツービッツ株式会社について
 2012年より認知行動療法を基盤としたアプリの研究・企画・開発を通じて、インパクト投資の領域で先駆的な活動を展開しています。当社が企画開発に携わった「こころアプリ」は、田辺三菱製薬株式会社がライセンシーとなり、うつ病の治療用アプリとして日本で初めての医療機器製造販売の承認を目指しております。また、医学情報誌「Journal of Clinical Oncology」(Impact Factor 44.5)に掲載されたスマイルプロジェクト研究で使用される「元気アプリ」「解決アプリ」を企画開発しております。さらに、こころの柔軟性とストレスに対する耐性を高めるトレーニングアプリ「レジトレ!」を企画開発し、京都大学が代表を務める医学研究プロジェクトの一環として、経済産業省および国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、企業や保険者がメンタルヘルスの予防・健康増進策を策定する際のエビデンスを創出するためのランダム化比較試験を実施しています。そして、「こどもがまんなかの社会」を実現するために「むぎまるアプリ」を開発するなど、デジタル認知行動療法アプリの社会実装を通じて、より良い未来を創造することに尽力しています。

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